いやしのプチ童話集-動物編無料で読める かわいい動物達の短い童話集です。温かくて楽しいお話になっております。ご家族でどうぞ!

第二話「ルーズの金色の栗の実」

森のなかは秋です。あこがれの栗の実を、ルーズは食べられるかな?

ドングリいっぱい!ルンルン

大きな森のなかに、小さなルーズというリスが、すんでいました。ルーズは、ドングリを食べながら、とつぜん思いだします。
「そろそろ、森のはずれの栗(くり)の木に『金色の実』(きんいろのみ)が、なるころだから、ようすを見にいこう。」森のなかまからは、よく聞いていたファンタスティックな金(きん)のいろをしたかがやく栗の実ですが、ルーズはなぜか、一ども食べたことがなかったのです。あじを知りませんでした。でも「ことしこそは、ぜったいに食べるぞ!」と、つよくけっしんします。

たのしみにして、森のはずれの栗の林(はやし)に行ったら、まだ栗のイガイガは、あおくてわれてもいないし、実はおちそうにありません。それからは、栗のようすを見るために、まいにち、かよいはじめました。

ルーズには、かよう道が、まるで幸せの虹(にじ)の道に思えてきます。虹(にじ)のうえを、かけているような気ぶんです。すこしずつ、すこしずつ、大きくなっていく栗のイガイガをみていると、たのしみでたのしみで、むねがいっぱいになってきます。

いまは、もうドングリなんて、食べる気もしません。かよう道ばたにドングリが、たくさん落ちていても「ふふ~んだ!ぼくは、もうドングリなんて、つまらないから食べないよ~だ!」と、見むきもしなくなります。

やがて、まいにち、なにも食べないで虹(にじ)の道をかよいつづけているうちに、お腹(なか)がすいてしまい走るちからも、なくなってきました。それである日、どうしようもないので、しかたなくドングリをひとつだけ、口にいれました。食べてビックリ!そのおいしいことと言ったら、これまでにないおいしさです。

ルーズは、ついついドングリをお腹(なか)いっぱいに、食べてしまいます。食べすぎたので、その日は、栗の実を見にいきませんでした。そもまま、森のおうちへもどって、ぐっすりねむりました。

そして、つぎの日の朝はやく、とてもげんきになったルーズは栗の実を見ようと、虹の道をさっそうとかけて行きます。その足のはやいこと!はやいこと!

ところが、ついてみてビックリ!しまう。なんと、栗(くり)のイガイガの中は、からっぽなのでした。『金色の栗の実』(きんいろのくりのみ)は、もうどこにもありません。いったい、どうしたのでしょう。それは、きのうのうちに、森のなかまたちが実をぜんぶ食べてしまったからです。そのことを、ルーズはしらなかったのです。ああ、ルーズは、ことしも栗の実を食べそこなってしまいました。

ルーズは、とぼとぼ!ジョンボリ!と虹の道を、ひとりでもどりながら、ふと!思いだします。きょねんも、そのまえの年も、すっかりおなじ失ぱいをしていたのでした。それで、いちども食べてなかったのです。

うっかり者のルーズは、まいとし、まいとし、さいごまでがんばらないで、とちゅうでやすんでいたことと、ドングリを食べすぎてしまい、ねむってしまうじぶんを、大はんせいしました、と。

「ルーズの金色の栗の実」おわり

かわいそうなリスのルーズですね。でも、やっぱりね。がんばらなきゃないぞ!とじぶんで決めたのだから、さいごまでやらなきゃね。それに、前のしっぱいを、すぐにわすれてはだめですね。でも、なんにも気にしないうっかり者だけど、明るくげんきなルーズは、おもしろいリスですね。

written by 徳川悠未