いやしのプチ童話集-動物編 無料で読めるかわいい動物達の短い童話集です。温かくて楽しいお話になっております。ご家族でどうぞ!

第一話「二毛猫ニッキーの小さな幸せ」

二毛猫(にけねこ)の、ニッキーくんにとっては、幸せってなんでしょうね?

大きな街のお店 どうしようかな

小菊(こぎく)が咲くバス停まえに、ニ毛猫(にけねこ)のニッキーくんが、住んでいました。 毎日ベランダにでてみては「プシュー!ブォー!」というバスの停(と)まる音と発車(はっしゃ)する音を、生まれたときからきいて、そだちました。 大きな町に向かうこのバスは、一にち五回、とおります。まいにち五回の「プシュー!ブォー!」の音のたびに、幸せでたまらず、ついつい、にんまりしていました。

ところが、ちかごろになって、ニッキーくんには大きなまよいが、でてきました。 それは、きんじょの猫なかまのうわさ話を、知ってからです。それをおもいだすのでした。

「このバスにのっかって町に行ったら、なんと!サンマのパレードとネズミのカーニバルがあるんだ。さんまとネズミがいっぱいいっぱい集まってるんだ!ああ、そこに思いっきりとびこんでいってみたいな。ああ、もうたまらないや!」 わくわくしてきて、ニッキーくんのしっぽがピーン!となります。 「でも、大きな大きな猫とりあみも、あちこちにあるそうだ。う~む、やっぱり、あぶないだろうか。どうしようかなあ?ぼくは、このバスにのっかって、いきたい気もするけど・・・。」

一にち五回なるバスのプシュー!を、きくたびに、まようようになって、十日(とおか)が、すぎました。 いつものようにベランダに出たニッキーくんは『きょうはおかしいぞ!』と、思いました。なにかが、ちがっています。
「ニャアー!そうだ。プシュー!ブォー!の音がきえちゃった!ニャーゴ!」思わず、大きな声でないてしまいます。
「いったい、バスはどうしたのだろう?」と、ニッキーくんは、とてもいらいらしてきました。

つぎの日になっても、そのつぎの日になっても、バスがとおりません。小菊(こぎく)が咲くバス停まえを、しょんぼりながめていたら、だんだん、かなしくなり涙(なみだ)がこぼれてきます。

そんな、ある朝です。ついに、あのききなれた「プシュー!ブォー!」が、ベランダにひびきます。

「ニャアー!ばんざい!」と、二毛(にけ)のからだが、よろこびのあまりベランダで、うき上がります。とび上がるほど、うれしいじぶんに、はじめて気がついたニッキーくんです。 ニッキーくんの心は、ほっ!と、しあわせをかんじたのです。きょう、ニッキーくんは、生まれてはじめてわかりました。

「ぼくは、サンマのパレードやネズミのカーニバルのある町は、いかなくってもいいんだ。そうさ、いかないぞ。プシュー!ブォー!の音がきこえる、このベランダが大すきなんだもんニャー!ぼくは、ここがしあわせなんだ。』と。

「二毛猫ニッキーの小さな幸せ」おわり

ニッキーくんのほんとうの「幸せ」は、どこにあったかな? ベランダでバスの音を聞いてる毎日でしたね。ささやかで小さな幸せでした。でも、ニッキーくんの幸せは、おだやかで住みなれたところで、ゆっくりくらすことでした。だから、そこで平和に、ほっこり!と、うれしそうでしたね。

written by 徳川悠未